人手不足と就職状況

 5月の有効求人倍率が1・09倍と、バブル経済崩壊直後の1992年6月以来約22年ぶりの高水準となり、数字上はバブルの余韻が残る時期に並ぶ「人手不足」となり、外食産業では人手が足りず閉店や営業時間を短縮する店が出たり、建築・土木では着工が遅れたり、出来ない現場が出ているほどです。

しかし、よく見ていくと、求人の多くはパートや派遣社員など非正社員の求人が中心で、5月の有効求人数でも、パートや派遣社員といった非正社員の求人が6割近くを占め、正社員の求人割合は4割にすぎず、正社員だけの有効求人倍率は0・67倍と、1倍を大きく割り込でいます。

また、職種による求人状況に大きな差があり、東京五輪招致で人手が足りない「建築・土木技術」の求人倍率は5・56倍であるのに対し、最も希望の多い「一般事務」は0・24倍の「狭き門」となっています。

さらに、産業構造の変化により、海外に生産拠点を移している製造業の求人は減る一方で、若い人手を必要とするサービス業関連の求人が増えている。このため、仕事を探す40歳以上の中高年には厳しい状況になっています。

有効求人倍率が良くなること自体は歓迎すべきことですが、「働きたい職種で正社員」という多くの人が望んでいる仕事を得るには、まだまだ難しい状況が続いているようです。

藤木

女性の活躍と配偶者控除廃止―その2

 安部首相が推進しようとしている「成長戦略」の中に、「女性の活躍」があります。「女性の活躍」自体は歓迎すべきものですが、女性の社会進出を促すためにその妨げになっている配偶者控除を見直そうという意見があり、賛成する方、反対する方で議論がされています。

賛成する方の意見は、一定の収入の範囲内で働くことを女性たちが決めていれば、事業主側にパートの賃金を上げる動機が生まれにくく、結果として、主婦のパートは低賃金の労働市場として定着してしまっており、非正規労働の賃金相場を下げる要因にもなってきたとして、見直しを求めています。

一方、反対する方の意見は、現実として、配偶者控除は子育て世帯の経済的負担を減らすという役割を果たしていて、配偶者控除をなくせば、子育て世帯の多くで経済的負担が増え、出生率の回復が鈍るなど、少子化がさらに加速するのではと反対しています。

賛成の方も、配偶者控除をなくす代わりに、子育て世帯への負担を減らす控除を増やすことも考えなければと補足しており、女性の働く意欲が向上し社会進出が促進される様な、経済的な対応(税制、最低賃金)と女性が働きやすい環境の整備と両方を実現できる制度を考えることが大切なのではと思います。

藤木

「残業代ゼロ」について(その2)

 働いた時間と関係なく成果で賃金が決まる新制度について、政府は対象者を「少なくとも年収1千万円以上」の高年収者に限定することで導入する方針を決めました。新制度は、政府の成長戦略に盛り込まれ、これに従って、厚労労働省は、来年の通常国会での労働基準法改正をめざして、年内をめどに審議会での議論を進める予定です。

「残業代ゼロ」で長時間労働を強いられる恐れがある働き方が、管理職以外にも導入されることが固まり、「働き過ぎを助長する」のではとの不安が広がっています。厚生労働相は、「少なくとも対象者が年収1千万円を割り込むことはなくなった」と述べ、「職務範囲が明確」「高度な職業能力を持つ」との条件もつけるとのことです。しかし、経済界や経済産業省が「全労働者の10%は適用を受けられる制度に」として年収を問わず働き手を幅広く対象にするよう主張してきた経緯もあり、時間がたつにつれ、制度の対象がより年収の低い働き手に広がる、との心配もあります

たとえ年収1千万円を超えて「残業代ゼロ」の新制度対象者になったとしても、長時間労働を強いられて精神的、肉体的な弊害が出ることは決してあってはならないことと思います。新制度の対象者に対しても労働時間を管理し長時間労働を制限するような仕組みを労使で考えて導入することで、長時間労働による精神的、肉体的な弊害が出ないようにすることも必要に思われます。

藤木

女性管理職候補の研修に関わってみて

 安倍政権は「成長戦略」に、女性の役員や管理職への登用拡大を盛り込んでいます。日本の女性の労働参加率は先進国では低く、管理職に占める割合も1割と、欧米の3~4割を大幅に下回っています。女性の労働参加を促す意味でも、女性管理職の率を上げることは必要と考えての事と思います。

最近、ある企業が女性管理職の候補者を集めて、管理職として必要となるスキルを学びながら、管理職となる意識を確立し自覚を促す研修に関わる機会があり、参加者の数人とお話しする機会を得られました。

研修は、一回きりの研修ではなく5年かけて徐々に育成していく研修で、年に2回候補者が集められて、これまでに何を学び、何を実行し、何が不足しているかを自分で把握してフィードバックをかけていくという研修スタイルで、自己の成長の具合もわかりながら管理職になるという目標に向かっていくという研修です。今回は4年目の1回目の研修でした。

お話しした方々は、いずれも管理者になることに対してしっかりとした考えと意識を持っていて、研修の効果が出ていると感じました。一方、管理職となることに対する悩みも抱えていて、特に「職場」と「家庭」をどうバランスしていくかという事に関しては、多くの方が話しておられました。これに対する一般的な解はなく、「職場」と個々の「家庭」事情により、バランス点はどこかを個々に見つけるしかないと思います。自分の働き方(ウェルバランス)はこうだというスタイルを考えて、それを「職場」と「家庭」の両方に理解してもらうことが大切と思います。現実にはそう簡単ではないと思いますが、この様な研修を企画し実施している企業であれば、うまくやっていけそうな気もして、きて、この様な企業が増えると良いなと感じました。

 藤木

技術の進歩がもたらす「働き方の変化」とテクノロジー失業

   近年、クラウド、インターネット、Wi-Fiタブレットなどの情報通信技術の進歩が働き方や暮らし方を大きく変化させています。

最近の労働時間を統計からみてみると、総務省統計局によれば2010年オランダが最も少なく1381時間、フランスは1479時間、日本は1745時間となっています。1970年当時、日本の高度経済成長の頃には2250時間程度だったことを考えれば、日本はこの40年間で年間500時間も労働時間が減っていることになり、その分余暇の時間が増えていることになります。このことは、大いに歓迎したいことです。

しかし、情報通信技術の進歩は、いつでも、どこでも仕事ができ、コミュニケーションが取れる時代を作り出しています。このため、“働く”と“暮らす”、“WORKの時間”と“Privateの時間”が混在してきていて、そこをどう調整していくかが、とても難しい問題となってきたように思われます。

そして、こうした情報通信技術の進歩は、ビジネスの根本を変えることがあり、「テクノロジー失業」を生み出す懸念もあります。たとえば、最近見られなくなった職業に“写植屋”さんがあります。印刷には欠かせなかったこの職業もDTPワープロ、PCの発達で見られなくなってしまいました。職業を選択する際にも、情報通信技術が進んだ社会で現在も未来も人々に残された仕事かを考えておくことも必要な時代になっているようです。

藤木

夏が来てしまいました

この数日の暑さは、初夏を通り越して真夏といった感じの気候で、北海道で生まれ育った私にとっては、耐え難い季節の到来です。

この暑さにもめげず、土曜、日曜は習慣となっている神奈川県立四季の森公園へウォーキングに行ってきました。

一面に黄色で染まっていた菜の花畑は、すべて刈り取られて作業員の方が秋桜の種を植えていました。秋が楽しみですね。ショウブ園に行くと、ショウブがすくすくとと育ってきていて、所々で白、薄紫、紫の花ショウブが咲き始めていて初夏を感じさせています。あと1週間もするとショウブ田一面に咲き誇ることになりそうです。

池では、冬の間16羽もいたカルガモがみんなどこかに飛んで行って3羽だけ残っていました。この3羽もいずれどこかに飛んで行ってしまうかもしれません。寂しい気持ちがしますが11月頃にはみんな戻ってきてくれたらいいなと思っています。一方、カメが多数見られるようになってきて、岩に上って甲羅から首、手足、尾を思い切り出して気持ちよさそうに甲羅干しをしていましたが、この暑さの中で熱くないのかなと心配になります。

森の中をウォーキングして道のわきにあるベンチに腰掛けていると、森を吹き抜ける風が心地よく、しばらく腰掛けていると一眠りしたい気持ちになります。小鳥の声や風の音を聞きながら、しばらくポケーッとしていると気持ちがとても落ち着き、また来週も来ようと思ってしまいました。

藤木

大手企業の決算発表をみて

 自動車や電機など大手製造業の14年3月期決算が新聞紙上で発表され、おおむね各社とも好調で、自動車では8社中6社の営業利益が過去最高となり、リーマン・ショック後の不振が長引いていた電機7社も、ソニーを除いてパナソニック富士通、シャープ等がそろって純損益黒字に転換しました。こうした業績の回復を受けて、企業は再び研究や開発に力を入れ始めました。これは、円安に頼らずに将来のもうけにつながる種をまき、育てるためと思われ、歓迎したいことと思います。

一方、輸出や投資の稼ぎで海外からお金が入ってくる経常黒字が減り、2013年度は初めて1兆円を割りました。これは、日本メーカーが海外の生産を増やし、円安でも日本からの輸出が伸びにくくなっているためです。今後国内生産を増やしてまで輸出しようという企業は少なく、「過去3年ほどの円高で苦しみ、みな海外に出て行った。今さら引き返すわけにはいかない」という企業も多く、この先、国内製造業における雇用は増えないことになりそうです。

日本で大量に生産した製品を海外に輸出して安く売ることで、企業の収益をあげ雇用の増大や賃上げにつなげるという昔の『輸出モデル』はもう成り立たなくなってきており、日本は大企業がもうかっても、国内の雇用増や賃上げにはつながりにくい構造になって来ているようです。景気の急回復で建設や小売りなどの現場で人手不足になっている状況もあり、労働力のシフトも考える必要もありますし、企業の収益を雇用増大につなげる新しいモデルを創出する必要もあると思います。また、法人税率を下げるなどして、海外から日本への投資や企業を呼び込むことも考える必要がある様に思われます。

 

藤木